Circular Economy サーキュラーエコノミーとは?

令和に入って初めての夏となった2019年7月、環境省が「2100年 未来の天気予報」を公開すると瞬く間に日本中で話題となった。現在の地球温暖化が進行したケースを予測した2100年8月の天気予報ニュースでは、東京は43.3℃、札幌でも40.5℃が示されていた。

拡散されたニュースには今後の生活を気にかける声から、企業のビジネスへの影響を懸念するコメントも寄せられた。

また、気候変動と同様に世界に大きな影響を及ぼしつつ進行しているのが人口増加だ。産業革命が発生した18世紀初期には7億人だった世界人口はわずか260年足らずのうちに10倍の70億人を突破した。さらに現在でも人口増加は加速度的に進行しており、今後80年間でさらに40億人が増え、2100年には世界人口は110億人に達すると見込まれている。

こうした歴史上誰も経験したことのない世界を迎えるにあたり、国が企業が、そして個人が生き延びていくために欠かせないことは、常に情報をアップデートし、気候変動や人口増加といった未来の指針を頼りに将来像を予測し、新しいアプローチを実践していくことであろう。また、現在大きなリスクを抱えたままになっている旧態依然の社会構造や経済の仕組みを根本的に変革していくことも急務である。

例えば、今後人口増加が進むことにより、石油やレアメタルといった地下に眠る枯渇性資源はいつ手に入らなくなってもおかしくない状況にある。また、食料に関しても今後人口増加や気候変動が引き起こす収穫量への影響により、安定した供給が難しい局面を迎える事態がすでに予測されている。

気候変動や人口増加が目まぐるしく進む中で、私たちは産業革命が起こった18世紀半ばから現在までのおよそ260年間に渡り、一貫して大量生産・大量廃棄型の経済モデルを推し進めてきた。その構造は、<資源を採掘し(take)>、<モノを作り(make)>、<捨てる(dispose)>という工程から「一方通行型モデル(linear economy)」と呼ばれている。

最先端の機械を導入した工場で中央集約的に効率よく生産するこの方式は、現在に至るまでの人口増加を支えられるほどの生活様式をもたらした。しかし一方で、可能な限り短期間で多量に生産・販売することが過剰に追求されたために、モノは短期間のうちに捨てられるような設計がなされ、廃棄物に関してもそれがもたらす負の経済についてはあまり関心が寄せられないままになってしまった。結果として、気候変動と人口増加が進む現代において新しい資源を調達することは年々難しくなり、これまで目を向けてこなかった廃棄物は国も企業も個人も対策せざるを得ないほどの負の経済を社会へもたらす影響力を持つまでになってしまった。

欧州で広まる新しい経済政策
「サーキュラーエコノミー」

こうした状況の中で、現在欧州では行政や企業により、これまでの「一方通行型モデル(linear economy)」に変わって新しい経済モデルが取り入れられ始めている。それが「サーキュラーエコノミー(circular economy)」だ。

サーキュラーエコノミーとは現在排出されている「廃棄物」を「資源」として繰り返し再活用し続けられるように循環の仕組みを構築する新しい経済モデルだ。最終的には「廃棄物」というものを無くし、全てのものが何かの資源として活用し続けられるような、一方通行型モデルの矢印を閉じることで資源循環の輪を構築する「クローズド・ループ(Closed Loop)」を目指している。

サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの特徴として、従来に比べ資源使用量と廃棄物量を減らせることが地球環境保護に繋がるだけでなく、新規事業の創出や資源調達・廃棄コスト削減に繋がることで、著しい経済効果が見込めるとの調査結果がアクセンチュアやマッキンゼーといった機関から報告されている。

既に2010年代前半期から、フィリップスやユニリーバ、アディダス、H&M、Apple、IKEAといった数々のグローバル企業がサーキュラーエコノミーを自社ビジネスに取り入れ、環境への負荷を減らしつつも大きな利益を上げていることで注目が高まっている。

また、並行してこれまでは「企業秘密」とされがちだった企業情報を公開することで「ビジネスの透明化」が進められ、企業同士がこれまでにない新しい形でのパートナーシップを結ぶ連携を見せていることも着目すべき点だ。

行政もこうした企業の転換をサポートするために、オランダやフィンランドではサーキュラーエコノミーを国の経済政策の根幹に据えることで多角的な支援策に取り組んでいる。

また、サーキュラーエコノミーの進展に伴い、エネルギー面でも枯渇性資源である石油や天然ガスと廃棄物問題を抱える原子力発電からの脱却を図り、太陽光や風力を用いた再生可能エネルギーへ移行する動きが進められている。

サーキュラーエコノミー型ビジネスへ転換する手法として、現在リユースやリサイクル、アップサイクルをビジネスに取り入れることに注目が集まっているが、「サーキュラーエコノミー=リユース・リサイクルビジネス」と捉えるのは大きな誤りである。

サーキュラーエコノミーとは単にリデュース(Reduce)・リユース(Reuse)・リサイクル(Recycle)のいわゆる「3R」を実践するだけでは決して達成できず、デザイン・設計の見直し、労働環境の改善、再生可能エネルギーの採用、ビジネスの透明化といった包括的な点から従来の構造を根本的に革新することによってようやく理想とするモデルに近づけることができるのだ。

アムステルダムが進める
「2050年までの社会構造の完全サーキュラーエコノミー化」

Circular Initiatives&Partnersが拠点を置くアムステルダムでは、市が2050年までの完全サーキュラーエコノミー化を目指す「2050年プラン」を掲げ、官民一体の取り組みが進められているため、日々の暮らしの中にもその成果が浸透し始めてきている。

例えば、アムステルダム市は2030年までに市内への電気自動車以外の乗り入れの禁止を検討していると公表しているため、街中では電気自動車の割合が増えてきている。街中に設置された電気自動車の充電スポットの電力は、全て自国で発電した再生可能エネルギーへの切り替えが進められている。すでに市内のトラムと電車は2017年から、スキポール空港は2018年よりそれぞれ100%風力発電の再生可能エネルギーで賄われている。

また、私が利用する銀行のABN AMROは軍事産業と原発産業への融資・投資を辞めるダイベストメントを行い、その分サーキュラーエコノミーやサスティナビリティを進める企業への支援を強化している。

こうした中で、従来は見られなかった新しいビジネスモデルも数々生まれている。Circular Initiatives&PartnersのオウンドメディアであるEarthackersでも取り上げた「一流シェフが活躍する廃棄食品レストラン」Instock「世界初サーキュラーエコノミー・ジーンズ」を開発したMUD Jeansもその一つだ。

サーキュラーエコノミーの中ではシェアリングエコノミーも促進されているため、洗濯機や食洗機、工具、車、自転車、アウトドア用品、コーヒーマシンなどは購入しなくとも企業のサービスを利用してサブスクリプションモデルでリースをすることができる。

「ビジネスの透明化」による新しいパートナーシップの形としては、スキポール空港は空港内ラウンジの照明設備をリースをするサーキュラーエコノミー事業をフィリップスと共に進めている。また、空港滑走路内に立ち入ったためにやむを得ず駆除・処分されていた鴨が、今ではInstockのレストランで調理・提供されている。複数の企業が廃棄物情報を共有することで、他企業に「資源」として活用してもらうこれまでにないパートナーシップも形成されている。

Circular Initiatives&Partnersがオフィスを構えているImpact Hub Amsterdamはサーキュラーエコノミーやサスティナビリティ分野のビジネス支援に特化したシェアオフィス・コワーキングスペースである。欧州委員会やアクセンチュア、PwCなどと提携し、アムステルダムでこうした分野の新規事業創出を支える土台の役割を果たしている。

このように、アムステルダムでサーキュラーエコノミーが多領域で進められている背景にはオランダという国の歴史や文化、国民性も深く関わっており、Circular Initiatives&Partnersの視察イベントの中ではそういった面も深掘りして探っていきたい。

日本にこそ大きな可能性が眠る
サーキュラーエコノミー

日本ではよくオランダやドイツは「環境先進国」と表現されることが多いが、「先進国」という表現は適切ではないように感じる。それは、元来日本発祥で欧州に広まった活動や、欧州各国にもまだ見られない日本独自の取り組みも数多く存在するからだ。

例えば、オランダでは現在サーキュラーエコノミーの分野で「アーバン・マイニング (Urban Mining)」という考え方が一つの採用が進んでいる。その意味は「遠くアジアやアフリカからわざわざ輸送コストをかけて新しい資源を調達しなくとも、自分たちの都市の中で廃棄されている資源を再活用しよう」というものであり、資源枯渇や廃棄物問題、調達コスト削減に向けた新しいアプローチ方法として理に適っている。

しかし、「アーバン・マイニング」の元を探ると実は「都市鉱山」という日本で誕生した言葉であることがわかる。これは、オランダ人の友人にも指摘されることがある。また、「廃棄食品を減らす」という観点から日本の発酵食品への注目度も高い。「従来活用されていなかったものを資源として活用する」という視点からも、元々ヨーロッパで関心が寄せられてこなかった海藻の活用法の研究も進められている。また、東京はアムステルダムの10倍以上の人口を抱える大都市にも関わらず、ごみ箱が設置されていなくともポイ捨てが少なく、人々が携帯灰皿を持ち歩いていることは高く評価されている。

それでも、Circular Initiatives&Partnersがアムステルダムの企業視察を進める理由は、アムステルダムはその社会構造や経済規模を考慮した際に、現在の日本にとって有益な学びとなり得るアイデアが多分野で豊富に存在するからである。

街の空気感、歴史的・文化的考察、ビジネスの見せ方・伝え方、従業員の雰囲気、提供されるサービスのクオリティ。


文面からだけではなく、実際に足を運んで五感を活用して感じ取り、学び尽くしていただきたい。

成功モデルをコピー&ペーストするだけでは決してうまくいかないことは承知なので、日本というフィールドを入念にリサーチした上でアムステルダムでの学びを応用して実践してほしい。


最後に、アムステルダム市は「learning by doing(やりながら、学んでいく)」というコンセプトを推進している。


これは、「100%確かというわけでなかったり前例がなかったりした場合でも、社会や企業、個人をよりよくし得る可能性が高い活動であれば取りあえず実践してみて、改善すべき点があれば都度改善していく」ということを意味し、行政は企業のそうした活動をサポートする姿勢を明確に打ち出しているのだ。


サーキュラーエコノミー型ビジネスは前例のない形式であることが多い。また、これまでに実践された多くの事例から「短期的には多額の初期投資コストがかかったとしても、その後長期的には安定した経済効果を生む状況」も確認されている。


これは戦後から現在に至るまで私たちが用いてきた「一年間に生産された財とサービスの市場価値で算出される」GDP(国内総生産)という短期的な経済指標とは相慣れないかもしれない。


ただし、GDPが必ずしも人々の幸福向上や地球環境改善に貢献する訳ではない点など常に万能でないことは、イギリスの経済学者Kate Raworthが著書『Doughnut Economics』(邦題:ドーナツ経済学が世界を救う)で示しているように明らかである。


従来の短期的な経済指標であるGDPの考え方に合わなかったとしても、長期的に社会や企業の利益となる見込みがあればサーキュラーエコノミー事業へのチャレンジをぜひ進めていただきたい。


人類の誰もが経験したことのない世界をよりよくするためには、これまでにないビジネスモデルと社会の仕組みが必要なのだ。




その先には逆に日本のモデルを世界に発信するといったさらなる道筋も見えてくるだろう。




焦っても仕方がないが、残された時間も少ない。




ゆっくりと急いで、みんなで世界をよりよくしていこう。




一人一人ができることから。




安居昭博(Circular Initiatives&Partners 代表 / サーキュラーエコノミー研究家)

Circular Initiatives & Partners

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